昭和考古学とブログエッセイの旅へ

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『第三次国共合作』ー中華新聞を斬る

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台湾で起こった「228事件」から昨日で69年目ですが、蒋介石孫文の像にペンキをかけたり、落書きする事件があったそうです。

そこに、中国が噛み付いたようです。

 

opinion.huanqiu.com

中国の大衆紙「環球報」を見ていたら、こんな面白い記事を見つけました。

 

「『台独分子』の勢いは既に”狂気”の域に」

というタイトルのコラムです。

「環球報」は人民日報の大衆版みたいなもので、中国ではよく読まれている新聞です。中国ではご存知の通り、言論の自由はタテマエ上はあるものの、「共産党の指導に従」わないといけないので、共産党のご機嫌を損ねるものは書けません。なのでどの新聞も論説は似たようなものなのですが、「環球報」は中国トップの意向をかなり反映した新聞なので、記事を追っていくと共産党の指向性がぼんやりと見えてきます。

最近目立つのが「台独」関係の記事。「台独」とは「台湾独立」のことで、特に今年1月の総統選挙から目立ってきたような気がします。そして、ところどころで新総統の蔡英文氏を突いています。つまり、共産党は「台独」と新しい総統に注目してますよということで、国内に爆弾を抱えている中国にとっては、「台独」は取り扱い要注意の爆弾の一つなわけです。

しかし、それは台湾にとっても同じこと。トップが「独立じゃ!」と言おうものなら、そこに中国が入り込む余地が与えてしまうので、「爆弾」は慎重に扱わないといけません。そこは台湾人もわかっているはずなので、これ以上どういう言うつもりはありません。

 

ここで、ちょっと息抜きに中国語のお勉強タイム。

「汹汹」とは文語で、「波が音を立てて押し寄せるさま」という意味になり、一種の擬態語のようなもの。「六亲不认」とは、直訳すると「六親等の親戚を認めない」。何のこっちゃ?と意味がわからないですが、意訳すると「人情に反した(こと)」「情けをかけない」というようなニュアンスになります。

 

利用できるなら蒋介石も「味方」

このコラムが面白いのは、意味をいちいち翻訳してるとキリがないので省略しますが、全般的に蒋介石や国民党を庇っていることです。庇うどころか、

「台湾民主化の礎を敷いたのは、(李登輝元総統とされているが、彼ではなく)蒋一族だ。その恩を台湾人は忘れて『台独』に走っている」

というような趣旨を述べています。確かに、蒋経国は台湾民主化への道標を指し示したことは確かですが、コラムには蒋経国の名前は出てこず。あくまで「蒋一族」とぼかしています。これが「歴史を直視しろ」と日本に言ってる国の大衆紙が言うことですかね?台湾も「中国」なら、ちゃんと台湾現代史を直視したら?と言い返したらどういう反応をするでしょうか?

 

しかし、共産党蒋介石&国民党って、不倶戴天の敵のはずなんですけど・・・と「???」が飛び交う人も多いと思います。確かにそうなんです。お互い相容れない存在だからこそ、大陸中国と台湾が現実問題として分かれているわけですし。

しかし、去年に習近平国家主席馬英九総統が電撃的「首脳会談」をしたように、お互いの距離が近づきつつあります。その理由は、何かお互いが近づくような利害があるから。

その「利害」って、経済は別として何かあるかな?と考えてみたら、あったんです。それが「台独」なわけで。「習馬首脳会談」の時は、次の総統選挙が控えていたのですが、その時から既に「蔡英文民進党主席の勝利確実」の声はあがっていました。逆に言うと、やる前から国民党の敗北は必至、政権を野党に渡すことになるということ。その野党が、国民党や共産党から見ると「台独分子の巣窟」です。今はちょっとトーンダウンしているものの、民進党は「台湾独立」を党の柱にしている政党、いくらトーンダウンしていても、中に流れる「台独」のマグマはグツグツと煮えている状態のはずです。

国民党としては、国民世論が民進党に傾いているから政権交代はある程度やむを得ない。でも「台独」の動きは阻止したい。対して中国は、「一つの中国」の原則は絶対に譲れない。台湾の独立なんて死んでも認めない。

となると、国民党と共産党は、「台独阻止」という利害が一致するわけなんです。現在の中共の台湾に向けた「敵」は台湾独立の動きそのもの、それは中華人民共和国の存亡にもかかわることなので神経質になっているのです。なんで台湾独立が中国の存亡にかかわるの?ということは、また機会があれば書きたいと思います。

 

そこで、俺はふと思いました。

「これって、『第三次国共合作』じゃねーの!?」

国共合作」とは「国民党と共産党が手を結ぶ」ということで、「第三次」ということは「第一次」「第二次」が過去にありました。日本で有名なのは、蒋介石西安で監禁された西安事変の後で行われた、「第二次」の方が有名ですね。その時の共通の敵はもちろん日本軍でしたが、「第三次国共合作」の共通の敵は、いわゆる「台独分子」、つまり台湾独立に向けた動きなのです。

「台独」を止めるためには、不倶戴天の敵である蒋介石すらネタにする。政治ってこうも複雑なのです。

でも個人的には、

「『呉越同舟』をリアルで見ちゃったよ!」

と興奮を隠しきれません(笑

 

中国の遠吠え

俺がいちばん注目したのが、コラムの最後の部分です。ここは全文翻訳してみましょう。

大陆走向繁荣富强,中华民族伟大复兴的目标十分明确。而台湾却完全迷失了,它的内部在撕裂,而要重新形成与大环境能够对接的、有共识的政治目标看上去遥遥无期。

(中国は富国(強兵)、偉大なる中華民族の復興という目標ははっきりしている。台湾は自分の目的地を見失い台湾の内部はめちゃくちゃ、裂かれてしまった中国と共に歩むという目的を新たに形成しないといけないが、政治的な一致はまだまだ先が見えない)

 

さすがは共産党の宣伝機関、最後にきっちり「中華民族の復興」というスローガンは忘れません。

そして、「台湾は『一つの中国』という原則をお忘れか?『台独分子』が中からかき乱している」と上から目線で諭しています。いやいや、台湾人は民主主義という手段で先の総統選挙+立法院選挙に投票したわけで、これは中国が望もうが望むまいが「民意」です。つまり、台湾民衆は「『政治的一致』なんて御免こうむる」というという選択をしたわけで、中はめちゃくちゃどころか、「台湾独立」以前に「中国はイヤだ」で固まりつつあるわけです。その流れを作ったのは、国民党の失策もありますが、あなた方自身のミスチョイスじゃないの?と。

しかし、よく考えたら「民意」がない国にそれを言っても、「猫に小判」ということに気づくを忘れていました(笑