昭和考古学とブログエッセイの旅へ

昭和の遺物を訪ねて考察する、『昭和考古学』の世界へようこそ

外国にも方言ってあるの?素朴な質問に答える

外国語を使っている仕事をしていると、よくこんな質問を聞かれたりします。

 

「海外にも方言ってあるの?」

 

日本には数多くの方言があります。

地域によって独特の進化を遂げたから、特色ある方言が多いですね。

最近は標準語の普及で方言色が薄れている言われていますが、それでも方言は無形の地域文化の一つでもあるので、大切にしてもらいたいと思います。

 

それと同じことが、外国でもあるのか?

答えはもちろん

「Yes」

です。

日本でも同じ状況があるのだから、そりゃ海外にだってあります。

しかし、方言の差というものは、お国の事情によって様々です。

 

英語の方言

たとえば事実上の国際共通語になった英語も、イギリスの英語もあればアメリカ英語もあります。「イギリス英語」と「アメリカ英語」は、基本はもちろん同じですが、表現に違いがいくつかあります。イギリスでは既に廃れて使われない表現が、アメリカでは残って今でも使われてすることもあり、「方言」という分類に入れて良いかと思います。

また、イギリスやアメリカ国内の中にも方言があります。イギリスの場合、「コックニー」というロンドンの下町方言があるし、アメリカも東海岸やテキサスの方言などがあるそうです。

また、オーストラリアでは、aの発音を「ア」か「アイ」と発音する人もおります。

today:「トゥダイ」

railway station:「ライルワイ スタイション」

というふうになります。

これを「トゥダイ英語」と私は言っていますが、オーストラリアに行って実際に聞いて、面食らった人も多いことでしょう。これは元々イギリスの方言らしいのですが、これも「オーストラリア方言」とみなしていいかと思います。

 

バックパッカーで世界中を旅していた時、あるオーストラリア人のおっさんに出会ったのですが、彼がしきりに言う、

「アイワイントトゥーチャインジ」

というフレーズが全く聞き取れませんでした。

 

彼が話ている言葉は確かに「英語」なはずなのですが、世界各国を歩いて英語には慣れとるはずなのに、彼の「英語」が全くわからない。他の日本人にも聞いてみたのですが、皆わからないとのことで答えは同じでした。

しかし、「アイワイントトゥーチャインジ」は彼の口癖のようで、何度も何度も聞いとていると、なんとなくわかってきます。

そして、数日の時間を経てようやくわかりました。

「これ、"I want to change"やん!」

彼は「自分を変えたい」ため、つまり自分探しの旅の最中、彼の旅のコンセプト

だったのです。

ようやく彼の言葉が「解読」できた時、彼との距離がすごく縮まった気がしました。

 

また、シンガポール英語の「シングリッシュ」や、インド英語も地域で独自の変化を遂げた英語という経緯から、「方言」ってみなしていいのではないかと思います。

 

特に、インド人の英語はかなり強烈です。

特にRの発音がかなり巻き舌で相当クセがあります。「インターネット」も、実際に耳にした発音をカナにしたら、

インテルルルルネットー

になります。

それでも、我々が意味わからん・・・って顔をしていても、彼らは全く意に介さず。

むしろ、

「なんで英語がわからんのだ!」

と向こうが不思議がる。

「お前らの"Engilish"はEngilishじゃねー、"Indish"や」

と私は冗談で言っているのですが、rだけは「英語という名の何か」の次元です。

 

しかし、彼らは発音が「メチャクチャ」でも全く意に介さない。

「この俺様の英語を喰らえ!」

とばかりにコミュニケーションを取ろうとする「根性」が、日本の永遠の課題、

「何故日本人は英語が話せないのか」

の解決に必要だと思ったりします。

 

イタリアの方言

日本と同じように、地方によって特色ある方言があるのがイタリアです。

イタリアに方言が多い理由は、19世紀に統一されるまで小さい国に分かれていて、言葉も同じように分かれていた事情があります。その結果生まれた方言のバラエティは、日本の江戸時代とよく似ています。

イタリアの共通語は、中部フィレンツェの方言がベースになっています。実はローマではないのです。

共通語って日本でも江戸で話されていた武士言葉の山の手言葉がベースになった通り、首都のことばが共通語になることが多いのですが、イタリアはちょっと違います。

イタリアの方言は、北部になったら文法まで違ってくるみたいで、その例が「複数形の表記」。

日本で習うイタリア語の複数形は、語尾を変えることによって表現します。

例えば、日本でもおなじみのイタリア料理、

「スパゲッティ」

は" spaghetti "という綴りになります。

これ、実は「複数形」で、「単数形」は" spaghetto "になります。

語尾が "-i"なら複数形、 "-o"なら単数形です。

しかし、スパゲッティは習慣上常に複数形になります。一本だけ茹でて食う人は、まあこの世にいないでしょうし(笑

北部はどうなるかというと、単語の後ろに"-s" 、"-es"をつけることが多いそうです。

「あれ?英語と同じやん!?」

と思った人は鋭い。

そう、詳しいことは書きませんが、英語の複数形表記は元々フランス語経由だったりします。

そしてフランス語とイタリア諸語は人間に例えたら同じ母親から生まれた姉妹なので、似ているのは当たり前。ちなみにスペイン語の複数形も全く同じです。

 他にローマやシチリア島にも方言があると言います。特にシチリア島地政学上アラブ・北アフリカとのつながりも深く、アラビア語の語彙や文法も入っていると言います。

 

韓国の方言

お隣の韓国にも、もちろん方言があります。

韓国の共通語はソウル方言ですが、釜山などにも方言があって、釜山の人から共通語を聞くと、なんだかナヨナヨした感じっぽく聞こえるそうです。

 

そして、北朝鮮も同じ民族の言葉をしゃべるけど、国があれだけ長い期間分かれていたら、言葉も徐々に違いが出てくるのは当たり前のこと。

また中国にも、北朝鮮との国境近くを中心に、少数民族としての朝鮮人が住んでいます。北朝鮮や中国の朝鮮族朝鮮語も、ある種の方言って扱っていいのではないかと、個人的には思います。

 

これについて、中国留学時代に経験した話を。

仲が良かった韓国人留学生と一緒に、上海の朝鮮料理屋へメシを食いに行った時のこと。店員さんも朝鮮人だったのですが、韓国人は韓国語でオーダーを取っていました。

しかし、ある店員さんとはなんだかコミュニケーションが取れず、イライラした空気を感じました。最後には彼女に対してだけ中国語でしゃべる始末。

「同じ朝鮮人やのに、なんで中国語でしゃべるん?」

と聞いてみたのですが、彼いわく。

「彼女の朝鮮語、全然わからん。俺の韓国語もわからんみたいやしな・・・」

当時の俺は19歳、お互いの現代史や政治事情もわからなかったので、

「同じ民族なんやから同じ言葉で話したらええのに」

と思ったものですが、後で調べたら韓国の南部と北朝鮮などの北部は元々方言みたいに違ってたよーで、それで現代史の事情もあって差が更に開いた、と勝手に思っています。

 

また、朝鮮半島の南に浮くチェジュ島(済州島)の方言もかなり差があるそうです。他の地方とコミュニケーションが取れないほど違いがあって、標準語をしゃべってもお国訛りが出ると就職にも影響がある、と韓国人が言うとりました。

 

ロシアの方言

ロシア語には、まことしやかに語られているある伝説があります。

「ロシアは、あんなに国土がデカいのに方言がない」

これは、果たしてホンマなんかいな!?

 

結果はNO

ロシアには「標準語」って概念が決まっていないそうで、今はいちおうモスクワの言葉が広まっています。

しかし、これが100年前のロシア帝国時代になると、当時「ペトログラード」って言われていたサンクト・ペテルブルグの言葉が標準語扱いでした。

 

日本人が「ロシア料理」と聞いたらまず思いつくのが、ボルシチですね。

ボルシチって実はウクライナ料理なのですが、それはさておき、ボルシチって実はサンクト・ペテルブルグ訛りです。今のロシア語では「ボルッシュ」というような発音をします。

ボルシチはロシア語で”борщ”と書くのですが、最後のщ”の発音はモスクワでは「ッシュ」のような発音、サンクト・ペテルブルグやと「シ(ッ)チ」のような発音となります。

それが何故ボルシチが日本語に定着したのかというと、日本にロシア語が入り学び始めたのは明治時代です。その時のロシアはロシア帝国時代です。

ロシア帝国時代の首都はペトログラードだったので、そこの方言が「標準語扱い」を受けていました。よって、日本人が学ぶロシア語のテキストも今のサンクト・ペテルブルグ方言となっていました。

なので、サンクト・ペテルブルグ方言を「標準語」として学んだ人たちが「ボルシチ」と発音、それが広まったのではないかと思います。

 

ロシアには確かに方言があるのですが、ロシアってあんなにバカデカい国土の割には思ったより方言差が少ない、というのことは確かなようです。

距離にして約9000キロ離れているモスクワとウラジオストクでは、言葉の違いがほとんどないようで、決して大きいとは言えない日本に数多くの方言が存在するのとは、事情が逆のようです。

 

その他の方言

他にも、詳しいことはわからないですが、ベトナムハノイを中心とする北部と、ホーチミン市を中心とする南部方言があるらしいです。

タイ語も北部のチェンマイの方言(「イサーン語」と言うらしい)があって、上品なしゃべり方から在住日本人から「タイの京都弁」と言われとるそうです。

ヨーロッパでも、イタリアと同じく近代まで小国が乱立して地方ごとのアクが強いドイツも数多くの方言があり、フランスも標準語はパリことばなものの、ノルマンディーやアルザス・ロレーヌ方言、カナダのケベック方言など、意外に多かったりします。

あと、スペイン語も、本場スペインのスペイン語はもちろん、中南米でも広く使われています。

実はスペインのスペイン語中南米スペイン語は細かいところで細かい違いがあるのですが、これも「方言」とみなすこともできますね。

 

さて後編では、自分の専門分野である中国の方言事情をお話したいと思います。

 

☆☆よろしければ、立ち去る前に下のボタンを押していただけると喜びます♪☆☆