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昭和考古学とブログエッセイの旅へ

昭和の遺物を訪ねて考察する、『昭和考古学』の世界へようこそ

上に政策あれば下に対策ありー中華新聞を斬る

www.asahi.com

 

中国は汚職がすごい、とよく言われます。

しかし、それは中国をよく知らない人が言う誤解です。中国のは伝統的に「ワイロ文化」で、汚職なしでは中国は何も進まないからです。「汚職がすごい」と言っても、中国は歴史をざっと調べても右を向いても左を向いても汚職汚職がない中国は中国じゃないのです。

「三年清官 十万雪花銀」

という言葉が中国にあります。

「(汚職を全くしない)清廉な官僚でも、三年間地方に赴任したら十万もの銀が溜まる」という意味ですが、どこからともなくお金が舞い込んでくるので気づいたら「十万銀」の貯金が出来ている、ということです。なら、確信犯で汚職する官僚は・・・もうどれくらい溜まるか想像するまでもありません。

中国には以前、「科挙」という官僚選抜試験がありました。しかし、ただの公務員試験と思ったら大間違いです。幼い頃から準備をし、「四書五経」という儒教書物を丸暗記、それこそ知識の北京ダックかフォアグラ状態という苦痛を伴います。実際の試験も、独房以下の個室に数日間閉じ込められ、気が狂う人もザラにいたそうです。しかし、それでも官僚になりたいのは、それだけの「うま味」があるということです。

官僚になると、それこそ黙っていても「十万銀」のお金が入ってきます。官僚になると家族親戚もお金目当てに寄りかかってきて、彼らを養う義務も生じてきます。中国の官僚は実は給料が少ないので、賄賂をとって汚職しないとみんなを養えない、という事情もありました。今の共産党汚職幹部も似たようなものですが、高級車に乗り、贅沢品にあふれた豪邸に住んでるのを見ると、どうも旧社会の官僚以上に「腐敗」しているようですね。

 

習近平政権になって、「腐敗撲滅」がうるさいくらいに叫ばれるようになりました。それまでも腐敗撲滅キャンペーンは何度も言われたものの、ほとんど骨抜きだったため効果はほとんどありませんでした。むしろ、やれるものならやってみろと、汚職する方に余裕さえありました。

しかし、習近平は本気でした。「虎でもハエでも叩く」と本人が言ってるように、血も涙もない汚職官僚摘発のじゅうたん爆撃。「聖域」の政治局常務委員(周永康)にまで手を出してからは、

「こいつ、本気モードだぞ」

と雑魚幹部は戦々恐々。「高級酒は飲むな」「高級タバコも吸うな」「高級レストランで食事するな」という贅沢禁止令も加わって、おおっぴらに、派手に振る舞うのは控えるようになりました。

 

汚職はしません。贅沢もしません。でも・・・

「上に政策あれば下に対策あり」

これも中国では古くから言われている言葉です。

上、つまり王朝や政府がいくらキャンキャンうるさく言っても、下の組織や庶民はスキを見つけてそれを骨抜きにしたり、無視したりする、ということです。

昨今の習近平による腐敗撲滅も例外ではありません。下っ端はきっちり対策を取りました。それが中国語で言う「不作為」です。

「不」がついてるから、漢字を見てプラスのことじゃないな、とピンとくるかもしれませんが、これは下っ端の「下に対策あり」の一端です。

お上のおっしゃる通り、汚職はしません。高級レストランで接待を受けません。高級酒も飲みません。でも、

 

 

 

 

 

仕事もしません!

 

ということなんです。

容赦無い腐敗撲滅キャンペーンの結果、中国のいたるところで「不作為」、つまり仕事のサボタージュがいろんな所から出てきて行政の仕事にとんだ支障が出る始末。日本に例えると、市役所で住民票を取りに行っても、市役所職員が「不作為」なので住民票一枚もGETできなくなる。しゃーないな、と賄賂を差し出しても、「汚職禁止なので!」と受け取らない。でも仕事をしてくれない。

じゃあどうすればいいの!?・・・どうしようもありません。

こんな確信犯サボタージュが続いた結果、ついにこんな事件が起こりました。

 

ついにこんな「ニセモノ」が

2015年、中国の真ん中あたりにある河南省のあるところで、住民某が役所の「不作為」に悩まされていました。

「よし、良いアイデアがある」

と彼が出したアイデアとは、なんと自分が「役所」を作ること。

同じく不満を持っていた友人と共に、公園に「◯◯市人民政府」(◯◯市役所)という看板を立て、手数料を取って市民向けサービスを行うことになったのです。きちんとハンコや「公文書」まで作る徹底ぶり、しかし手数料は「本物」と変わらず仕事も早かったそうで、市民からの評判はなかなかのものだったそうです。

もちろん、これが長続きするわけもなく「本物の人民政府」にバレて逮捕、国家転覆罪とかで有罪になりました。ニセモノ、コピーが氾濫する中国で、ついに「政府のニセモノ」まで出たか!と、ニセモノに慣れてる中国人も斜め上のニセモノに腰を抜かしたそうです。でも、彼らは不法に金を儲けようとか悪巧みしよう意図ではない上に、同じように「不作為」に悩まされている同士、ネットでは彼らの行為は同情に値すると批判する人はほとんどいません。

 

汚職が経済を支える?

汚職は中国の文化だと上に書きました。しかし、一つ書き忘れていました。汚職は「経済」でもあるのです。

習近平汚職摘発や贅沢禁止令のとんだ副作用は、経済がすっかり冷え込んでしまったということ。中国経済の難点は消費意欲がある中間層が育っていないということで、要するに「超大金持ち」と「超貧乏人」の両極端の世界。前者にはすさまじいほどの消費意欲があります。日本をはじめ、海外での「爆買い」もその一つ。爆買いも、習近平贅沢禁止令で国内で贅沢ができなくなった彼らが、

「海外ならいいんだろ!」

と開き直ってる行動でもあります。これも「上に政策あれば下に対策あり」の一つと言えます。

実は金持ち類が中国経済、というかお金の流れを動かしていて、それが汚職禁止や贅沢禁止でお金の流れが鈍ってしまいました。お金は経済で言えば血液みたいなもので、それが鈍ってしまうと活動も弱まってしまうのは考えるまでもありません。

汚職は撲滅したいけど、それやると経済が壊れてしまう。腐敗撲滅が激しくなれば下の「不作為」も激しくなる。中国のジレンマはここにあります。

 

これからの中国の課題は、この悪循環をどう解決するかでしょう。でも、解決策があったらとっくにやってると思いますけどね・・・。