昭和考古学とブログエッセイの旅へ

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軍事施設の撮影には気をつけろー中国での日本人拘束に添えて

日本人をスパイ容疑で逮捕へ

 

www.jiji.com

 

どういう経緯で捕まったのかが書かれていないので、詳細は不明ですが、2つの可能性が考えられます。

①日本に対する政治的圧力
②軍艦などの軍事施設を、もの珍しさで撮ってしまった

①は、中国が十八番にしている指桑罵槐(しそうばかい。「桑を指して槐(えんじゅ)を罵る)です。
簡単に言うと、日本人を「スパイ容疑」で一人捕まえたのはあくまで「桑」でありカモフラージュ。本丸である「槐」は日本政府か大使館などということ。
指桑罵槐」は中国の毎度おなじみの行動パターンなので、中国情勢に興味がある方は覚えておいた方がいいです。
ただし、これについては今回の本題ではないので詳しくは書きません。

 

 

本題及び今回の問題は、②の方です。
「海外は日本と全く常識が違う」
とは、耳にタコができるほど聞き飽きた言葉ですが、そこには「軍隊がない」日本ならではの抜け穴があります。それが軍事施設。
日本では、自衛隊駐屯地にある戦車を撮っても、不法侵入などではない限り何のお咎めもありません。むしろもっと撮影しろと言わんばかりにアピールしてくることも。

 

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軍港にしても、日本ではこの程度の遠景なら何の問題もありません。
ある意味イージス艦以上の機密情報の塊である潜水艦でも、停泊しているくらいの撮影であれば大丈夫。ただし、たとえ退役済みで解体寸前のオンボロ潜水艦でも、中の見学時は携帯持ち込み絶対禁止です。

しかし、外国で軍事施設の撮影をする場合、細心の注意を払う必要があります。
日本がフリーすぎてハードルが低くなってしまうのはやむを得ませんが、
海の上に軍艦が浮かんでいる。おお、珍しいとカメラを向ける。国によってはそれだけで「スパイ罪」で逮捕される可能性が高いです。
Yahoo!掲示板などでは、中国ならではとかいう書き込みもチラホラ見受けられますが、それは中国特有の問題ではありません。中国の肩を持つわけではないけれど、それはよほどの軍事音痴か、「嫌中」バイアスがかかりすぎ。
日本でもこんなもの、戦前なら100%アウトです。

戦前では列車に乗っていると車掌が突然、

「鎧戸を閉めて下さい!」

と大声で乗客に通知することがあったのですが、それは軍事施設が車窓に入るということ。車掌のクセに偉そうにと指示に従わないと、当然スパイとして最寄の警察署、それも鬼より怖い特高課へご同行。


ややこしいのは、橋・トンネル・軍民共用空港・鉄道施設(駅を含む)も「準軍事施設」として撮影禁止な国も多いということ。日本も、戦前は北九州の八幡製鉄所や各地の発電所、変電所がこの類でした。
陸で国境を越える際の国境も、「国境の街」ならいいけれど、本当のボーダーはダメと思っておいた方が無難です。
昔の話ですが、中国広東省広州の白雲空港は人民解放軍(空軍)と共同で使用していました。今の広州空港も「白雲空港」を名乗っていますが二代目で、私のいう白雲空港はもっと市街地寄りにあった初代の方です。
この空港は、日本からの国際便もふつうに発着していた空港でしたが、空港内は撮影禁止。旅客機のすぐ近くに人民解放軍の戦闘機も止まり肉眼で思い切り確認できましたが、カメラどころか立ち止まって窓の方を見るだけで注意されていました。

 


海外には、ものすごく身近すぎて意識すらしていない軍事施設もあります。

 

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たとえばここ。台湾の台北にある総統府です。
台湾政治の司令塔と同時に、台湾行ったら一度は見てみなという観光名所でもありますが、周囲にはヘルメットに憲兵または「MP」と書かれた警備の憲兵が、通行者を威嚇するかのように目を光らせています。
彼らを「警備員」と書いている人もいますが、いやいやいやいや、正真正銘本物の憲兵(軍隊)です。セ●ムとかA●SOKなんて甘いものではありません。まあ、日本には憲兵がいないので、軍事知識がない人のフィルターを通すと「警備員」に見えるのでしょうね。
総統府は芸術的にも価値の高い、建築学の傑作です。近くで見るとその威厳に圧倒されると同時に、大正時代によくもこんなもの作ったなと感心してしまいます。
よって、せっかくなので一枚・・・という気持ちに必ずなります。
が、近くから総統府を撮ろうとすると、周囲をウロウロしている憲兵に注意を受けます。実は私も総統府の近景撮影は禁止ということを知らず、総統府の真正面でスマホを出し総統府に向けただけで、正面にいた憲兵2人に怒鳴られてしまいました。
「こりゃあかん」
とただならぬ雰囲気に感づいた私は、
「對不起!(すんません)」
と言ってスマホを引っ込めました。相手は憲兵、ヘタに逆らったらその場で銃殺されても文句は言えない。これに関しては、親日もへったくれもありません。

そして違う日、同じく総統府にカメラを向けた中国人上海語を話してたのでたぶん)憲兵の注意をガン無視。

すると憲兵さん、銃口を向け指を引き金に置き、走って突撃。それが合図になったか、周りにこんなにいたか!?というほど、銃を持たない憲兵があちこちから出没。
文字で書くと大したことはないかもしれませんが、条件反射で耳を手で塞ぎ伏せたほどの一触即発でした。

こんなに厳しかったっけ?と思って調べてみると、ここ直近かなり厳しくなっているようです。理由ははっきりしませんが、昔の感覚で総統府にカメラを向ける時は注意しましょう。憲兵にワーワー言われたら、総統府は撮影禁止だこのヤロー!と言ってるんだなと思っておいて下さい。あ、憲兵自身にカメラを向けるのもNGですよ。

 

総統府に関しては、こんな話もあります。
まだ台湾が、戒厳令の世界記録絶賛更新中だった頃(台湾は、「世界一長い戒厳令が敷かれた地域」という人類史上不滅の世界記録を持っています)、総統府の前にある学校の女子高生が美術の授業で総統府の絵を描きました。
しかし、あまりに細部まで描きすぎました。要するにめちゃくちゃ絵が上手かったのです。ところがそれを証拠に、お前共産党のスパイだろと国家反逆罪で捕まったという、ウソのような話を中国語の先生から聞いたことがあります。


ちなみに、後で台湾人に、総統府の撮影ダメになったの?と聞いたところ、
憲兵がいないところなら(撮影しても)いいよ(笑)」

 

旧台湾総督府


どこまでだと怒られないか試してみると、これくらいの距離なら何も言われませんでした。

ただし、横断歩道を渡った先はキラーマシーンならぬ憲兵山盛りゾーン、撮影は控えた方がいいかも!?

 

先日台湾へ行った際、台湾領空に入るとこんなアナウンスが流れていました。
「台湾領空では、上空からの撮影は法律で禁止されております」
これも軍事的に考えると当たり前と言えば当たり前。
日本の感覚でパシャパシャ写真を撮るだけで、立派な法律違反なこともあるので、注意しましょう。


で、今回の一件は一体どっちやねんということですが、
私の推測では①②の両方ではないかと。

「樋口健」さんという日本人が、たまたま見つけた中国の軍艦を、日本で護衛艦を撮影する感覚で撮影しようとしたが、官憲に捕まってしまった。
故意、つまり本当にスパイでないなら、警察などで罰金を払い、日本領事館預かりになって説教。最悪の場合、強制送還です。

しかし、これをカードにしてして日本に圧力をかけてやれ、という当局の下心が働いた。「樋口」さんは味噌汁の出汁程度、「樋口」さんがたまたま大物でネズミで黄金の出汁が取れればしめたもの、というわけです。
中国の新聞は所詮共産党製スピーカー(宣伝機関)なので、新聞報道を通して何らかの政治的メッセージを発信したという可能性も考えられます。


ただし、無許可で軍艦を撮影する外国人があまりに多く、たまたま日本人が捕まったので、
「もういい加減にしろ!」
という、政治性ゼロのメッセージの可能性もありますが。この実例は、20年以上前ですがあったので。

これに関しては、近視眼的にカッカせず少し時間を置いて見た方がいいかと。どういう状況か、この記事では全くわからないのだから。

 

 いずれにしても、海外で軍事施設(戦車や軍艦なども含む)や、「準軍事施設」を撮影する際は、周囲の人がどういう行動を取っているか、または地元の人に一言聞いてみる方が無難です。
さもないと、言われもないスパイ罪で捕まる可能性は十分にあります。麻薬とスパイ罪は、知らなかったごめんなさいでは済まされない場合が多いので。

世界が厳しくおかしいのではありません。日本の方が、スパイ活動も含めて軍事フリーダムすぎておかしいだけなのです。