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昭和考古学とブログエッセイの旅へ

昭和の遺物を訪ねて考察する、『昭和考古学』の世界へようこそ

筆談-日本人と中国人の漢字コミュニケーション

 

今日は、漢字を書いて中国人とコミュニケーションを取る話やで~

日本語を勉強している外国人に、

「日本語の難しいところはどこですか?」

と聞くと、いろんな回答が返ってきます。

しかし予想通り、大多数の人が答えるのは漢字です。

 

中国語を勉強している外国人に、

「中国語の難しいところはどこですか?」

と聞くと、同じようにいろんな回答が返ってきます。

しかし予想通り、大多数の人は「漢字」と答えます。

 

ただし、これには例外があります。

日本語に関しては中国語を使う人、中国語に関しては日本語を使う人を除く、ということです。

 

ここでわかるように、日本人と中国人は「漢字」という共通の文字を使用します。

漢字は「表意文字」なので、字を見たらすぐに意味が理解できるところが良いところです。「表意文字」でわからなければ、象形文字の一種と思えば結構です。英語などのアルファベットは、音を表現するものなので、「表音文字」と言います。

なので、漢字を書くと言葉の壁を超えてコミュニケーションが取れたりします。これを筆談」といいます。

 

中国に限ったことではないのですが、海外旅行でいちばん気になるのが言葉の問題。今はインターネットの普及と同時に英語が国際共通語としてかなり広まったので、ネットがふつうのツールになる前のよりはかなり英語は通じるようになりました。

しかし、それでも100%通じるとは限らないし、旅行する本人が英語ダメという場合もあります。海外旅行は不自由も楽しさの一つなので、そこまで不安なら旅行自体止めた方がいいかもしれません(笑

しかし、中国の場合は別です。

日本人は漢字というコミュニケーションツールを自然に覚えているので、同じ漢字を使う中国人とは漢字を書いて筆談すればいいのです。これで中国語を覚える時間と労力が解消します。

筆談が楽しくて敢えて中国語を覚えないという人もいて、中国旅行用の「筆談ノート」片手に旅をする筆談の猛者も実際にいます。それも一人や二人ではありません。

 

筆談が通用するのは中国だけではありません。同じ漢字圏の台湾や香港でも使えます。

10年以上前ですが、初めて香港旅行に行く友人が言葉の心配をしていました。

英語はあまり話せないし、中国語(広東語)なんてとんでもございませんのレベルだから…としきりに不安がっていたので、それなら簡単、筆談すればいいと伝えました。

香港人なら英語もだいたいの人がわかるので、漢字で表現できなかったら英語で補足すればいい。水買いたかったら

「我買水」

って書けば、「こいつ水欲しいんだな」と理解してコンビニを教えてくれるかもしれません。

インターネットカフェでメール打ちたかったら、

「我必要送e-mail、You教me Internet cafe的場所」

って書けば、言わんとする意味は通じるはず。あとは気合と根性でなんとかしろと。

友人は実際にこれを使ったらしいのですが、ばっちり通じてた!とえらい喜んでいました。

 

漢字の意味も日中でたいてい同じなので、日中の漢字熟語も意味は、一部を除いてたいてい同じです。

この単語通じるかな?と心配になる必要は、一部を除いてほとんどありません。

そう、一部を除いて

その一部に当てはまってしまった例があります。

 

15〜6年前、中国の北京を旅行していた時のことですが、昼飯を食べようと、街角のどこにでもある食堂に立ち寄りました。別に何の変哲もない、夫婦ふたりでやっているごくふつうの大衆食堂だったのですが、看板娘の奥さん(老板娘)の明るさで建物の古さや多少の不潔さは気にならない程でした。

私が日本人とわかると、腰を抜かすようなオーバーアクションで驚き、思わず

「見て(日本人って)わからなかったか?」

「流暢に中国語しゃべってるし、日本人だなんて全然思わなかったわよ」

私は思わずニヤリとしました。上海と広東省で中国語を勉強してきたせいか、私の中国語は南方訛りが混ざっていて、特に中国の北の人にはすぐ日本人とバレてしまいます。

逆に、南方訛り爆裂の台湾では全くバレないのです。台湾で日本人というと、

「旦那、またまたご冗談を~(笑」

となります。マジだよ!ほれ!と日本のパスポートを見せてもほぼ華僑扱い。ときには、

「へぇ~!いつ帰化したの?」

とまで言われる始末。この話はまた別に機会を設けて書くことにします。

この奥さんは幸い(?)わからなかったですが、中国人の、ウチ(自国人)とソト(外国人)を嗅ぎ分ける独特の嗅覚は恐るべしです。

 

その後、奥さんが何か思い出したかのように厨房に戻り、あるノートを持ってきました。

「前に日本人がうちに食べに来てね、中国語わかんないから筆談したのよ」

と。

開けると、漢字の羅列がノートの上にびっしりと。明らかに深い筆談をした跡が見えました。筆談でコミュニケーションは取れている模様。

内容を追ってみると、この漢字の主は休み中に中国を旅行していた大学生で、北京やその周囲を回っていました。

そこで、

「ここがちょっとわからないの。どういう意味かわかる?」

と私に聞いてきた部分がありました。

 

その大学生君、どうも旅行中にお腹を壊したようなのですが、それでも内蒙古へ旅の続きを強行。奥さんが大丈夫?と体調を心配していたのですが、彼の回答が

 

「我是大丈夫!」

 

でした。

彼女いわく、これが意味不明とのこと。

 

この漢字で、日本人なら

「僕は大丈夫だよ!」

と言いたかったのはわかるでしょう。

惜しい、ホンマに惜しい!! 彼の言いたいこと、痛いほどよ〜〜くわかります。

しかし、残念ながら「大丈夫」は中国語では全く意味が違うのです。それまで筆談できちんとコミュニケーション出来ていただけに、最後の最後で落とし穴が待ち受けていたようです。

 

中国語にも「大丈夫」という言葉はあるにはあるのですが、日本語に無理やり訳すと「男ますらお」「(君子として)立派な男」。最近の新語ふうに書くと「漢(おとこ)」というニュアンスになります。それも古びた文語なので(今は「好漢(好汉)」を使うことがほとんど)、学のない人は「大丈夫」が何をいわんとしているかすら理解できません。

奥さんは「大丈夫」の中国語の意味はなんとなくわかったそうですが、お腹大丈夫かい?と聞いてるのに、

「てやんでい!俺は漢なんでい!」

と答えたら、確かに意味不明です。

 

もちろん、私は即座に理解できたので、

「彼は”没关系[沒關係]”(メイクアンシー)と言いたかったんだよ」

と、日本語で「大丈夫」はこういう意味で日本人がよく間違える単語の一つということも伝えると、彼女はなるほどね!と納得してくれていました。

 

中国に住んでいた頃、私もある時、

「他の日本人のすなる筆談といふものを、我もしてみむとてするなり」

という『土佐日記』の紀貫之の気分で、中国語を話せないフリをして筆談とやらをやってみたことがあります。

しかし、あまりにまどろっこしく、

「ああああ!もうしゃべった方が早いわ!」

大阪人のいらちという悪い癖が出てしまい、私の筆談デビューは5分弱で終わりを告げました。

その後中国人たちからは、

 

「なんだ!おめー中国語話せるんじゃねーかよ!」

 

とツッコミが入ったのは、言うまでもありません。

 

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