昭和考古学とブログエッセイの旅

昭和の遺物を訪ねて考察する、『昭和考古学』の世界へようこそ

ブロガーのためのボキャブラ辞典ー「笑」

 

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ブロガーというと少しニュアンスが軽い感じがするのですが、「もの書き」と書くと威厳がどこからか発生し、重々しくなります。

小説家だってコラムニストだって、大分類すれば「もの書き」。我々ブロガーは、「もの書き」としてはノーベル文学賞川端康成大センセと同格なのです。我々は「先生」と呼ばれてもいい存在なのです。誇りを持ち、胸を張ってブログを書きましょう。・・・ってそんなに肩肘張らなくてもいいか。 

それはさておき、「先生」と呼ばれるプロの物書きと、ネット界のチンピラ物書きブロガーとの最も大きな違いは、やはり語彙力。

日本語は、世界でもトップクラスの語彙の多さを誇ります。

しかし、我々はその日本語のポテンシャルを活かしているのか。それは甚だ疑問です。プロの物書きは、100%とは言わないけれど、日本語の潜在能力を出来るだけ高く、フルに活かそうとしているのだと思います。「ことばを活かす」という意味では、漫談や落語、漫才などの話芸のプロも同じでしょう。
偉そうなことを書いている私も、日本語の潜在能力の3%も使っていない自信があります。

 

さらに、ブログを書いている以上、PVを増やしたい、読者数を増やしたい、スターを増やしたい・・・そりゃもう欲を挙げればキリがありません。
内容(コンテンツ)も重要ですが、うちのブログはなんだか伸びないな・・・と思っている方は、表現方法を増やしてみるのも方法の一つ。
野球に例えると、PVだ読者数だと目の色変えている人は、ストレートを思い切り投げているだけという印象があります。ストレートがずば抜けて速ければ、元阪神の江夏のようにエースとして伝説を残せますが、速くなければ早々にスタミナ切れを起こし、そのままフェードアウトってことも。
伸びが止まったということは、ストレートが通用しなくなったということでもあり、フォークやシンカーなど球種を増やせという神の声でもあります。そして、表現の球種を増やせばブログを書くのもまた楽しくなるだろうと。野球でも、クビ寸前のダメ投手が球種一つ覚えただけで別人になったという例は、枚挙に暇がありません。

森繁久彌は、ある芸人にこう言って励ましたそうです。
「庭石っちゅうものはね、君、地面に出ている部分が小さくて、地面の下が大きいっちゅうもんがりっぱなんだよ」

「もの書き」にとって、語彙力が「地面の下が大きい庭石」になる基礎になるのだろうと。

 

まあ、私も偉そうなことは言えません。
お互い勉強する「ブログ表現向上委員会」という意味でも、こういうことを一つ書いてみたかったのです。

今回は「笑」をテーマに、今からでもブログで使える表現を探してみました。

 

  

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 そもそも、「笑う」とはどういうことか。

①おかしさ・うれしさ・きまり悪さなどから、やさしい目つきになったり、口元を緩めたりする。また、そうした気持ちで声を立てる

大辞林

 これが一般的な「笑う」の意味です。

 

②ばかにした気持ちを顔に表す。嘲(あざけ)る、嘲笑する。

大辞林

 こういうのもありますね。「嗤う」という書き方をすることが多いです。IMEには「嘲笑う」も変換候補に出てきます。この使い方は古く、文例では日本書紀にまでさかのぼります。

他にも、こんな使い方もあります。

 

③花が咲く(大辞林

春になって芽が出たり花が咲いたりして、明るいようすになる(大辞泉

 この意味で使う時は、「咲う」と書くことが多いです。俳句など詩歌の世界では必須単語に入るほどよく使われます。「花咲う」「山咲う」などは、『プレバト』の俳句コーナーでもよく出てきます。

③の派生でしょうが、こんな意味もあります。

 

④果実が熟して割れ目ができる(大辞林

こういう使い方もあるのですね。知りませんでした。栗が熟してパカっと割れる表現として「栗が笑う」が文例にあるのですが、これを応用すれば文中に使えそうですね。

 

⑤しまりがなくなり、十分に働かなくなる。しっかりとしなくなる

大辞林

足取りがしっかりしなくなる(大辞泉

 一見、なんのこっちゃ!?となるこの意味ですが、「歩き疲れて膝が笑う」なんて使い方しますよね。そういうことです。

 

さて、ここから国語辞典をめくって・・・もとい、アプリなのでスライドしていくと、「笑」から派生したさまざまな言葉が出てきます。

 

・喜笑(きしょう)
読んで字のごとく、「喜んで笑うこと」です。ガッツポーズして喜び笑みを浮かべる人が想像できますが、「彼は喜びのあまり、笑みを浮かべた」なんてくどくど書かず、「彼は喜笑した」の一言で表現できます。

 

・嬌笑(きょうしょう)
「女性がなまめかしく、はなやかに笑うこと」と書かれていますが、女性らしいセクシーな(色っぽい)笑いですね。
これは一種類だけではなく、「ウフッ」から「エヘッ」まで、女性らしいなーと思える笑いのことです。

 

・哄笑(こうしょう)
「大声でどっと笑うこと。大笑いすること」です。「哄」「高」に変えても意味は同じです。
普段は使わなさそうな表現ですが、「こうしょう」で変換すると比較的上の方に出現するので頻度は低くないということでしょう。
「一同思わず哄笑した」という文例が辞書にあります。
「大笑い」系の単語は、「絶笑」「大笑」などの表現もあります。

 

・笑具(しょうぐ)
「笑いのタネ」「笑いのネタ」という意味です。「笑い種(ぐさ)」という表現もあります。
「彼の仕草がとんだ笑具となり」というような使い方ができそうですね。
「笑い種」の方は、『その時は三日ばかりうち中の笑い種になって大に弱った』(『坊っちゃん』)漱石も使っています。

 

・笑覧(しょうらん)
「自分のものを他人に見てもらうこと」をへりくだって言う謙譲語です。
「あなた様にはお笑いモノでしょうが、ご覧下さい」ということです。
「こんなブログですが、ご笑覧下さい」なんて、今からリライトしてでも使うべき表現ですね。

 

・笑殺(しょうさつ)
なんだかただならぬ「殺」という言葉が出てきましたね。意味もただならぬ雰囲気ですが、
「笑って相手にしないこと」という意味になります。「鼻で笑って無視」ということです。
「彼の提案は笑殺された」
なんて使い方ができますね。

先日、韓国が慰安婦合意の「内容の意思疎通ができなかった」と表明したのに対し、日本の菅官房長官が、

「向こうさんの内政問題なので」(=知るかボケ)

と切り捨てましたが、これがリアルの「笑殺」です。

 

・笑府(しょうふ)
娼婦ではありません。
中国明王朝時代の本で、お硬い本ばかりの中国古典の中でも異色の、というかほぼ唯一のユーモア小咄集です。
落語にも大きな影響を与え、落語を知らなくても名前は知っている「まんじゅうこわい」の噺は、ここに収められた小咄が元ネタです。

 

・売笑(ばいしょう)
これ、売春のことです。戦前までは売春婦を、「売笑婦」という表現としてよく使われていました。
ちなみに、「売春婦(売笑婦)」はあくまで違法な売春をする女性たちで、当時は合法だった遊郭の女性たちは、「売笑婦」「娼婦」ではありません。
格の高い遊郭だと、「お女郎さん」とリスペクトされていたところもあったほどです。
遊郭はあくまで「公娼」で、売春婦である「私娼」とは明確に区別しないといけません。
では、何故売春婦が「笑」なのか。
これは中国は周の時代の故事によるもので、「笑みを商売道具に春を売る」ことから「売笑」という言葉が中国で生まれました。
それが日本へ伝わり、「売春」という言葉ができた経緯です。

 

・笑気(しょうき)
これは今までの意味とは打って変わって、「一酸化二窒素」(N2O)のことです。
聞きなれない化学用語ですが、簡単に言うと手術の時に使われる全身麻酔薬のこと。
これを吸入すると、顔がほのかに痙攣して笑っているような表情になるため、この名前がつけられているそうです。

 

・愛嬌笑い

「愛想笑い」という表現はよく使われていますが、「愛嬌笑い」は同じ意味で使われます。同じ表現に「お世辞笑い」や、漢語風の「巧笑(こうしょう)」というのもあります。

愛想笑いはそこら中み有り触れ過ぎている表現なので、たまには違う言葉で表現してみると、ブログが新鮮に見えるやもしれません。

 

・笑いさざめく
「さざめく」はさざなみのようにガヤガヤと音を立てることで、笑い声がさざなみのように響くということから、「大勢の人がにぎやかに笑う」という意味となります。
『教室から学生たちの笑いさざめく声が聞こえる』という文例が載っています。

 

・笑い崩れる
だいたい意味は察すると思うし、察した通りの意味です。
「姿勢が崩れるほどひどく笑う」ということで、要は大笑いする、爆笑するということですね。
「大笑いする」も使い古された表現なので、「全員が大笑いした」を「全員が笑い崩れた」と表現を一つ変ると、「おや?」と読む方がフラグを立ててくれます。

 

笑い初め
新年の「初笑い」という言葉がありますが、それと同じことです。
俳句の新年の季語にもなっています。

 

・打ち笑(え)む
「微笑むこと」で、なんだか雅な香りがする表現です。
同じ意味で「笑まい」「笑まう」という表現もあり、万葉集にも出てくる古語の生き残りでもあります。

 

・笑壺
「えつぼ」と読みます。似たような響きに「笑窪(えくぼ)」がありますが、何の関係もありません。
「笑い興じること」で、「笑壺に入る」という慣用句で使われることが多い言葉です。笑壺に入るは「大笑いしたり、大喜びする」という意味なので、これはブログでも十分使えそうですね。

 

・笑み割れる
これは人間の表情をあらわすものではなく、「栗のいがや、果実などが熟して自然に割れる」という意味です。
「笑み割れそうな両頬をいとど膨張(ふくら)して」という表現が、二葉亭四迷の『浮雲』に出てきます。

 

・咲(え)笑う
笑うの前に「咲」がついている。ということは、花が咲くように笑う・・・と私は解釈しました。これは、「声を立てて笑う」ことですが、「咲」からして女性が笑うさまを表現したものだと思います。
是非とも、「咲」の字の力を活かして女性の笑い声として使ってみるといいでしょう。
たとえそんな意味がなくとも、そういう意味づけをさせるのも「もの書き」の力です。


・締め笑い
「声を殺して笑うこと」です。
「壺々口の締め笑いんも愛嬌をくくんで」(二葉亭四迷浮雲』)という文例が載っています。

 

・追従笑い
「相手に媚びへつらうように笑うこと」です。漢語風に「諂笑(てんしょう)」という言葉もあります。学校や会社に一人くらいいそうですね、こういう人。
通称、スネ夫笑いとも、茶坊主笑いとも言い・・・ません。とっさに私が作りました。


・一顰一笑
「顰」がどう読んで良いかわからない言葉がでてきました。「いっぴんいっしょう」または「いちびんいっしょう」と読みます。
「かおしかめたり笑ったりすること。顔に表れるちょっとした表情の変化」という意味で、要はご機嫌のこと。
「一顰一笑を伺う」という使い方が辞書に載っており、これを「ご機嫌」に変えて使うと、ブログのレベルが一つ上がるかもよ!?

 

実際にこうして記事にして驚いたのは、「笑」に関する語彙の多さ。日本人はマジメすぎてユーモアがないというのは、ほぼ全世界の認識です。しかし、「笑」に関する単語は英語より絶対に多いはず。
次回は、喜怒哀楽のうちどれかをやってみようかと思います。